世界展望
考えて若くなる
◆ 日本の研究者たちは,多くの人々の脳が“運動”不足のため,実際に収縮している証拠があると考えている。東北大学教授の松沢大樹氏とそのグループは,コンピューターに接続した走査装置を用いて,様々な人の脳の大きさを測定した。そして,知性と感情をつかさどる脳の部位が,ある職業の人の場合に他の人よりも早く収縮し始めることをつきとめた。例えば,農家の人,バスの運転手,仕事の単純な事務系サラリーマンといった労働者の中には,30歳という若さで脳の縮み始める人がいると言われている。一方,多くの弁護士,大学教授,医師などの脳は,60代また70代になっても小さくならないようである。このことは,精神的に活発な農家の人やバスの運転手など,霊的な事柄に時間を費やす人々についても確かに言える。ロンドン・タイムズ紙の日曜版に掲載されたロバート・ワイマントの報告はこう述べている。「松沢氏は自分の実験から,通常高齢化に伴う[脳の]収縮には,唯一の治療法しかないと結論づけている。つまり頭を使うことである」。
エジプトの11番目の災い?
◆ 昨年の夏に,幾百万という大型のどう猛なネズミがエジプトに侵入し,穀物を食い荒らし,家畜や家禽や幾人かの人間を殺害したと伝えられている。ネズミがカイロの郊外に達した時地方議会には,げっ歯類動物が「大人を悩まし,子どもたちを襲い,ネコを追いかけている」という報告がなされた。7月半ばには,エジプトの農業大臣が,4万ヘクタール近くの穀物がネズミによる被害を受けたと言われているデルタ地帯の二つの県に非常事態を宣言した。この事態をタイムズ・オブ・ザンビア紙は次のように伝えている。「聖書の旧約には一度も挙げられていない新しい災いがエジプトを襲った。酔いどれネズミである」。タイムズ紙の説明によれば,幾千ヘクタールもの小麦や野菜を荒らしたネズミは,「ナイル川のデルタ地帯にあるサトウキビの汁を飲んで酩酊する」ため去って行ったと言う。
恐れを知らぬばくち打ち
◆ 米国ネバダ州にあるハービーズ・リゾートホテル-カジノが,あるゆすりの仕掛けた爆弾によって破壊された際,「ハービーズホテルの近くのすべての賭博場では営業が続いていた」とAP特電は伝えている。カエザルパレスにいたあるリポーターは,「スロットマシンのところで遊び興じていた人々は爆発の一瞬手を止め,『きゃー』という声を上げてから,またお金を配り始めた」と述べている。その爆発によって大きなビルから大きな破片が飛び散り,幾つもの区画に落下したが,賭博熱に浮かされている客の注意はその爆発の力によってもそがれることがなかった。そのゆすりは,爆発をやめてもらいたければ300万㌦(約7億2,000万円)を払うように要求していた。
虫歯予防のワクチン?
◆ 砂糖を与えられたアカゲサルのうちあるものは,近代的な練り歯みがきで歯をみがかなかったにもかかわらず,同じ食べ物を与えられた他のものより虫歯にかかる率が70%も少なかった,と伝えられている。ニューサイエンティスト誌によると,そのサルたちは虫歯を引き起こすバクテリア(Streptococcus mutans)から取ったたん白質の断片を接種されていた。このワクチンを開発したトーマス・レーナー教授は,これまでのところサルたちは副作用を経験していない,と述べている。これは人間の歯の手入れにどんな影響を及ぼすだろうか。それは時がたってみないと分からない。
鳥の住宅危機
◆ 猛威をふるうオランダニレ病のために巣を失う鳥が英国には非常に多く,数種の鳥,特にフクロウの類が絶滅に瀕していると科学者たちは警告している。かつていたる所に生い茂っていたニレの木は,多くの鳥が巣を作る木となってきた。木の穴に巣を作る鳥にとっては特に巣作りに打ってつけの木となってきた。ロンドンのオブザーバー紙はこう説明している。「ニレの幹や大枝が折れると,その切り口からたいてい木の内部が腐ってゆき,深いうろを形作る。……そのうろは上部は開いているが,生きた丈夫な壁で囲まれている。このようなあつらえ向きのうろを作り出してくれる木はほかにない」。メンフクロウは特に絶滅に瀕している。ニレの木の代わりに巣作りの場所となる古い納屋などが近代的なものに建て替えられたり,郊外の住宅に改造されたりしているからである。危機を緩和する一助として科学者たちは枯死したニレの木を切り倒さないよう人々に勧めている。
フランスの犬害
◆ フランスの動物愛護協会のスポークスマン,ダニエル・ヌーリによると,フランスでは10年ほど前に,犬を飼うことがそれまでになく流行した。ヌーリは,「この現象は急激に広がって行った」と語り,フランスには今や優に800万匹を超す犬がおり,そのうちの3分の2は都市部にいると推定している。このため,パリでは80万匹以上の犬の不始末が大きな問題になっている。パリのシラク市長は犬の飼い主に自分の飼っている動物の後始末をするよう呼びかけた。当局者たちはこの説得運動が効を奏することを願っているが,もしうまくゆかなければ1978年にニューヨーク市の取ったのと同様の措置を取ることを考えている。ニューヨーク市では,ペットの後始末をしなかった飼い主に最高100㌦(約2万4,000円)までの罰金を課すという新しい条例が制定された。フランスでは,現在毎年約10万匹の犬が捨てられている。また,最近のある週末(二日間)には,パリの道端で150匹の犬が死んでいるのが見つかった。
最長の自動車用トンネル
◆ 世界最長の,最も近代的で高価な自動車用トンネルが,予定通り昨年の9月5日に開通し,一般の人も使えるようになった。建設に10年をかけた全長16.3㌔のゴタード・トンネルは,スイスのイタリア語地区とドイツ語地区を結んでいる。制限速度の時速80㌔で走ると,このトンネルを通り抜けるのに12分かかる。
精神病の治療
◆ 世界保健機関の7年にわたる研究によって,重症の精神病の治ゆ率は,先進国よりも発展途上国の方がずっと高いことが明らかになった。「サイエンス80」誌によれば,研究の対象となったナイジェリアの患者の58%,インドの患者の51%が,「1回だけ精神病の発作を経験したが,その後は治ゆしたものと判断された」。一方,「工業技術の進んだ国々の場合,予後ははるかに悪い。1回の発作があって回復した患者の割合は,デンマークのわずか6%から中国の27%まで広がっている」とその報告は述べている。同誌はまた,発展途上国においては,「強度の精神病でも比較的早く完全に回復する」ようであるが,「米国や他の工業国の場合,精神病にかかった人の約半数ほどが回復不能となっている」と説明している。
太陽エネルギーによる飛行
◆ 昨年の8月7日,ジャニス・ブラウン(31歳)の操縦する飛行機が,一度だけ接地したものの,太陽エネルギーだけで14分21秒間飛行した。世界初の太陽エネルギー飛行機と言われる重量31㌔の“ゴッサマー・ペンギン”号は,米国カリフォルニア州で,地上1-2㍍ほどの所を約3.5㌔にわたって飛行した。そのデザインは,2年前に英国海峡を横断したペダル式のものと似ている。
自然治ゆ
◆ 伝えられるところによると,稲妻の電光で62歳のエドウィン・ロビンソンの健康上の問題が大部分解決されたという。米国メーン州でトラック運転手をしていたこの人は,1971年に交通事故に遭って視力を失い,聴力も完全ではなくなった。ところが去年の夏に稲妻に撃たれ,ロビンソンは20分の間失神した。「意識が回復した後,彼は前と同じように良く見ることも聴くこともできた」とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。「1か月後には,以前はげていた頭にまた毛髪が生え始めたと本人は話している」。現在ロビンソンは「それはだんだん濃くなっており,妻もそのことを非常に喜んでいる。私は35年間頭がはげていたが,それは遺伝的なものだと聞かされていた」と述べている。本人の言葉によれば,補聴器は「燃えてなくなってしまった」が,今では「子供のように聴くことができる」。その目については,彼の眼科医であるアルバート・モールトンがこう述べている。「これは説明のつかないことだ。なぜ視力が回復したのか私には分からない。分かっている事と言えば彼がかつて盲目であったが今はそうではないということだ」。ロビンソンはさらに,静脈瘤の問題も,治ゆ力を持った天からの稲妻に襲われて以来消えうせてしまったと語っている。
空の安全
◆ 米国内の18の国内線の航空会社と,アメリカおよび外国の国際線の航空会社40社の安全記録からすると,飛行機事故で命を失う危険は過去20年間に半分以上減少した,と科学アメリカ誌は述べている。国内線の航空会社の場合,乗客の死亡する確率は,1957年の98万8,000分の1から1976年の259万9,000分の1に改善された。国際線の航空会社の記録の場合は,これほどかんばしくはないが,それでも1960年の16万3,000分の1から1975年の34万分の1に減少している。
赤ん坊と車の交換を試みる
◆ 最近,米国ニュージャージー州の夫婦が,自分たちの子供と,8,800㌦(約211万円)の中古のスポーツカーとの交換を図ったとして逮捕された。「向こうはすでにかぎと車の書類を持っており,私たちはナンバープレートを付けるところだった」と自動車商は語った。「その夫婦はショールームの床に赤ちゃんを置いて行った」。この自動車商は,その夫婦から取引きに関する話をもちかけられた時すでに警察に出頭しており,取引きが進んでいる間,州警察の警官たちが現場を取り囲んでいた。「最初は,車を赤ちゃんと交換してもよいとばく然と考えていた」,とこの自動車商は語っている。この人は自分の子供を火事で失っていた。しかしこの赤ちゃんの将来のことを考えた。「この男の子は,自分が車と交換されたことを知ってどのように人生に立ち向かえるだろうか」。
世界の賃金くらべ
◆ US・ニューズ・アンド・ワールドリポート誌によると,米国の労働者は,ヨーロッパのある国々と比べてみると,格安の賃金で働いている。報酬に付加給与を含めると,1979年のアメリカ人の1時間当たりの労働賃金は9.71㌦(約2,330円)である。しかしスイスではそれは11.77㌦(約2,820円),ドイツ連邦共和国では12.06㌦(約2,890円),スウェーデンでは12.23㌦(約2,930円),そしてベルギーでは最高額の12.29㌦(約2,950円)であった。主要な工業国の労働者で,これよりも時間当たりの賃金が少なかったのは,6.74㌦(約1,620円)の日本と,5.83㌦(約1,400円)の英国であった。
62万5,000ドルの植木ばち
◆ 夫を失った英国の一婦人は,最近,自分が戸外で植物の容器として用いていた東洋風の小さな入れ物が実際には万金に価することを知ってひどく驚かされた。絵を教えるために立ち寄った一人の美術専門家が,この小さなはちに気付き,それが15世紀の明朝のものであると鑑定したのである。この婦人の夫は,数年前東洋に旅行した際にこの容器をもらっていた。それは競売で約62万5,000㌦(約1億5,000万円)で売れた。