世界展望
「世界記録集」の中から
● 「1982年ギネスブック世界記録集」の「印刷部数の最高」と題する見出しの下には,聖書に加えて次のような記述が含まれている。「ニューヨーク市ブルックリンのものみの塔聖書冊子協会が1968年5月8日に発行し,エホバの証人が非商業的な経路を通じて売却した『とこしえの命に導く真理』と題する堅表紙の192ページの本は,1981年4月1日までに,115の言語で合計1億冊に達した」。1982年の初頭には,この聖書研究の手引き書の印刷部数は,116の言語で1億200万冊に達している。
ギリシャの主教たちの戦い
● 最近ギリシャ正教会の主教78人全員が,懸案の政府提案立法について討議するために集まり,その際,腕力と舌による激しい争いが生じた。エレウテロウポリスのアンブロシオス主教がセラフィム大主教は政府と結託していると非難した時,セラフィムが「自分の席から雄鹿のように跳ね上がり,はやぶさのように私の所に飛んで来て私のあごひげを引っぱり,大声を上げ,のどを絞めると脅した」と同主教は主張している。アンブロシオスはこの攻撃を,「教会史上前例のない暴力行為」とみなしている。この騒然とした会議の結果,民事婚を合法化し,姦淫を行なった人々の投獄に終止符を打つための政府提案立法に反対する声明が出されたが,法務大臣のエフスタティオス・アレクサンドリスは,議会の議決に当たって教会とさらに話し合うことは「不要」であると述べた。
フランスの「新式の道徳」
● フランスは,同性愛行為が許される法的年齢を15歳に引き下げた。元法務大臣のフォイエ氏は,フランス政府が「新式の道徳」を導入しつつあると言明した。しかし現在の法務大臣であるバダンテ氏はこの動きを支持し,男子が15歳の少女と性関係を持つことが法的に認められているのだから,自分の論理に従えば,男子がそれと同じ年齢の少年と性関係を持つことを禁ずるのは正当な根拠を欠く「差別」であると述べている。
スペインの納税者の負担
● スペインの週刊誌ガセタ・イルストラダは,「教会,危機にひんする商売」と題する見出しの下に,ローマ・カトリック教会は1982年中,スペインの納税者に「90億ペセタ[約207億円]以上」の負担をかけることになると報告している。その記事は次のように説明した。「スペインが国家として行なう,教会への寄付は,毎年公務員の賃金並に上がり,今年はほぼ9%増加している。この寄付の90%は,2万4,000人の教区司祭の賃金として支払われるために取り置かれるが,このことは事実上スペインのカトリックの司祭たちが,国家の公僕であることを示すものである」。
「ガセタ・イルストラダ」は,これが標準的な僧職者にとってどんな意味を持つかを説明し,次のように述べた。「教区司祭は基本給として毎月2万ペセタ[約4万6,000円]を支給されるほかに幾らかの手当があり,合計すると少なくとも2万7,000ないし2万8,000ペセタ[約6万2,100円ないし6万4,400円]になる。……司教には5万5,000ペセタ[約12万6,500円]支払われているが,大抵の場合彼らには家と食事も無料で与えられているので,この賃金がなかなかのものであるということを思いに留めておかなければならない」。
ガンとこってりした食事
● 医学研究者たちは,脂肪や肉の多量に含まれている食事が結腸ガンと関連していることを示す付加的な証拠を発見した。テルアビブ大学医学部サックラー校は,同じような状況下に置かれたイスラエル人の2グループの比較研究を行なった。ただ,テルアビブ在住者のグループのほうが,近くのキブツ在住者のグループよりガン罹病率の高い点が異なっていた。この2グループ間の大きな相違点は,キブツの居住者の食事が果物や野菜に富み,脂肪や牛肉が少なかったのに対し,都市の居住者の食事はその逆であったことだと言われている。キブツの成員の場合,結腸ガンの罹病率は3分の1であった。その研究者たちは次のような結論を下した。「結腸ガンを防ぐ最善の方法は,心臓血管系の病気やその他の病気を予防する面で効果があるとされてきたつつましく理にかなった食事である」。
アフリカにおける「ダラス」
● 性と裏切りを売り物にする,米国の有名な連続テレビ番組が,最近南アフリカでも放映され始め,その結果「ダラスは居間を売春宿に変える」という見出しが新聞に載るようになった。「どれもこれもダラスが原因で,集会は短縮され,訪問は断わられる」とディー・ファーテルラント紙は報じている。同紙は,道徳行動規準会の会員の次のような言葉を引用している。「南アフリカに住む我々は,3分ごとに強姦が起きるという大きな社会問題を抱えている。そしてダラスではそれが普通のこととして示されている。それには,堕落した人に対しこれが普通であって自分もそうすることができると思わせる力がある。……人々は目ざめなければならない。SABC[南アフリカ放送協会]は我々の居間を売春宿に変えている」。
ブラジルにおける飲酒
● サンパウロのニュース雑誌ベジャは,ブラジル人のたしなむ蒸留酒の量は,世界第2位を占めるポーランド人の2倍以上に上ると述べている。伝えられるところによると,ブラジル人は年間一人当たり13.4㍑の蒸留酒を消費する。もっとも,アルコール飲料全体の消費量においては第4位である。1980年にこの国で生じた交通事故の1,500万件以上は,アルコール中毒と関係があったと言われている。
輸血に関するイタリア人医学博士の意見
● イタリアの医学誌コリエーレ・メディコは最近,輸血によって病気をうつされたと言われている伝染性単核症の重症患者に関して論評し,こう述べた。「輸血にB型肝炎その他の危険が伴うことは周知の事実である。それなのに医師たちはこの事実を過小評価し,厳密な意味では不要な場合にも輸血を施そうとすることが多い。……しかし,ある患者(21歳の若者)は,1回の切断手術で済んだ。数年後にこの患者は免疫による防衛機構を取り戻し,単核症は最終的に治ゆしたが,それでも状態がもっと悪化したとしても少しも不思議ではなかった。このことは……我々が患者に輸血を施す決定を下すとき,その患者が直面する様々な危険を再度我々に思い起こさせるはずである」。
登山が過熱化
● イタリアのニュース雑誌パノラマによると,世界で最も高い山々に登るために自分の命を危険にさらす熱心な冒険家たちが年々増加しつつある。ヒマラヤ山脈にいどむ幾百人という外国人登山家のうち,その冒険で命を失う人々は10%という驚くべき数字に上ると言われている。しかも彼らはその特権のために毎回約300万円ないしはそれ以上の高額のお金を費やす。熟練したガイドのベッペ・テンティはこう述べている。「ヨーロッパでの登山経験があると,もう2万6,000[フィート(7,925㍍)]の山に登れると考えてしまう人がいる。血気にはやる彼らは先を急ぎ,体が慣れないままベースキャンプまで直接に空路を行く場合がある。そのような場合,7人中二人は死亡する」。エベレスト山自体もまた,観光旅行者の侵入で害を被っている。その中腹より高い所には空港とホテルがあり,「そのあたり一帯には巨大なごみの山」ができているとベテランの一ローマ人登山家はこぼしている。「エベレスト山を下る巨大な氷の滝は,テベレ[川]よりも汚染されている」。
結婚に関する混乱
● 米国ペンシルバニア州フィラデルフィアの大司教管区は最近,暗黒街で処刑された有名なギャングの一員の葬式をカトリック教会で行なうことを拒んだ。この男がゆすりを働き,贈収賄に関与し,あるいは他の犯罪活動に携わったために拒否したのだろうか。そうではない。大司教管区のスポークスマンはこう説明している。「この男の結婚は当教会の目に妥当なものではなかった。人は,二人の証人を伴って一人の司祭の執り行なう結婚式を挙げるべきであるが,この男の場合にはそれが行なわれなかった」。習慣としては暗黒街の人物に対しカトリック式葬儀が型通り執り行なわれているため,同教会の目には,暗黒街の殺人や傷害事件よりも,結婚に関する専門的な規定に違反することの方が重大な犯罪と見えるのであろう。
一方法王ヨハネ・パウロ2世は,離婚して再婚したローマ・カトリック教徒は,新しい配偶者と性関係を持たない場合にのみ聖餐にあずかることができると発表した。昨年秋に開かれた世界司教会議の活動を要約した文書は,こう説明している。「これは事実上次のことを意味する。つまり,例えば子供の養育のような重大な理由のためある男性と女性[再婚したカトリック教徒]が別れる責務を果たせない場合,彼らは完全な自制のうちに,つまり結婚した夫婦の正当な行為を慎むことによって生活する義務を自らに課すということである」。一方聖書は,離婚を容認しておらず,結婚した夫婦すべてに対し,結婚の分を互いに奪うことがないようにと警告している。―コリント第一 7:1-5。マタイ 19:9も参照。
消失する農地
● 米国のセシル・アンドラス元内務長官によると,米国では毎日31平方㌔の農地が失われている。これは1年にすると121万5,000㌶に相当する。アンドラスはこう述べた。「過去10年間に我々は,バーモント州,ニューハンプシャー州,マサチューセッツ州,ロードアイランド州,コネティカット州,ニュージャージー州,デラウェア州を合わせた広さの地域を失ってしまった」。このように農地が失われたのは,主に宅地造成,個人の家,学校,ショッピングセンター,幹線道路,空港などのためである。アンドラスはこう結論している。「今舗装して後で支払い,という哲学は,アメリカ合衆国を月賦で買ってゆき,農地の危機へと追いやるようなものだ」。
観客の暴動の引き金を引く
● 米国ボストン大学の教育学の一教授は,観客の暴動が米国で急増していると報告している。ジョン・シェファーズ博士は,10年にわたりニュー・イングランド地方のスポーツファンを調査し,「競技場での暴力行為は観衆の暴力行為を呼び起こす」という結論に到達した。フットボールに関し同教授は,試合の中で暴力行為があった場合,その約2回に1回は観衆の側にも騒動が生じると述べている。
かさで身を守る
● 米国の多数の郵便配達人が,犬の攻撃に対処する新たな方法を採用している。彼らはワンタッチで開くかさを使う。襲って来る犬の方にかさを向けそれを突然開くと,驚いた犬を退却させるだけの力がある,と郵便配達人たちは伝えている。この方法はかなりの成功を収めているようで,ある郵便局の局長は,「だれかを病院へ送り込むような悪質な攻撃が全くなかったのは今年が初めてだ」と説明した。
ごみを売る
● ニューヨーク市のごみの見本のように見せかけたものが,今,新型商品を置いているある種の商店でビニール袋に入れて売られている。この包みの発案者はこれを「ニューヨークらしさのかけら」と呼んでいる。この小さな包みには,新聞の切れ端,ガム,たばこの吸いさし,缶入り飲料の“リングプル式のふた”2枚,架空のショーの切符1枚が入っている。たばこの吸いさしとリングプル式のふただけは実際にニューヨーク市の道端から拾ってきたものである。「人々は何でも買うものだ」とごみ袋の考案者は述べている。
デザインを大型に
● 香港<ホンコン>のスタンダード紙の一報道によると,中国の人々は次第に背が高くなりつつある。その報道は中国未来学会の研究によっており,同紙は,「上海<シャンハイ>と浙江省の平均的中国人……は19世紀の欧米人と同じほど背が高くなっている」と付け加えている。どんな結果になっただろうか。「靴,衣服,公共施設,家,作業場[その他]の……デザインの再考が必要になるだろう」。