世界展望
陰うつさを増す飢きんの影
◆ 食糧問題の専門家たちが,近いうちに飢きんに見舞われる恐れがあると警告しはじめたのはしばらく前のことである。それ以来,それら専門家たちは考えを変えただろうか。それとも,まもなく飢きんが起きると思われるが,それによる死亡者の数は頭初の予想より少ないだろうと考えるようになっただろうか。それに答える,ロイ・L・プロスターマンのことばがザ・ワールド・ツデイ誌に載せられていた。プロスターマンはこう語っている。「9月以来,わたしはいっそう非観的にさえなった。……石油危機に加えて肥料工場の生産能力の不足ということがこうした感触を強めている。……アメリカおよび他の富裕国によって,今大規模な援助がなされないかぎり,政状不安のまん延に加えて,さらに5,000万人ほどの死亡者のでる恐れがあると考えられる」。
飢える亜大陸
◆ インド亜大陸では依然として人々が飢えている。インドとバングラデシュの両国では,現在のところ記録的な収穫が続いている。それにもかかわらず,インドは食糧暴動に悩まされている。報道によると,こうした暴動の大半は,食糧品を“公正価格店”を通して安い助成価格で配分することに反対している農民が政府に売り惜しみをするために生じている。農民は作物をできるだけ高い値のつく場所で売ろうとする。人口が急増し,一平方㌔当たりの人口密度が今や約500人にも達しているバングラデシュは,食糧の輸入を余儀なくされている。ちなみにインドの人口密度は一平方㌔当たり164人である。パキスタンでは,作物に壊滅的な被害をもたらした昨年8月の大洪水の傷跡がまだいやされていない。
国連は“必要”か
◆ 世界的に緊張の緩和が見られるゆえに,国連はもはや不必要になったと考えている人が少なくない。はたしてそうだろうか。フィンランドの歴史家マックス・ヤコブソンによるとそうではない。ヤコブソンはこう書いている。「戦争防止のために協力し合うというブレジネフとニクソンの合意は,国際的な平和維持機関の協力なしには効果を発揮できなかっただろう。中東における国連軍の必要性がこの点を裏付けている」。
卑わいな文学
◆ 最近のこと,米国の書評家アルフレッド・カズィンは,ルイビル大学で開かれた“現代文学における愛と性”に関する会議で話をした。キュリア・ジャーナル誌の報道によると,カズィンはその話の中で,アメリカ文学はロマン的思想に基づいて築き上げられており,あからさまもしくは“卑わいな”表現を用いてはいなかったが,今日では性に支配されている点を指摘した。そうした転換はいつ生じたのだろうか。同誌はこう報じている。「大きな変化は,爆弾や銃弾による大虐殺によって人々が幻滅感や自己覚醒を感じるようになった第一次世界大戦後に生じた,と同氏は語った」。
地球の衛星
◆ 何千億円もの経費を費やしてさまざまの探査器が宇宙空間に送り込まれ,中には月や遠くの惑星に向けられたものさえあった。しかし研究者たちは,宇宙空間の中でどこが最も重要な場所であると結論しただろうか。米国航空宇宙局(NASA)の局長ジェームズ・C・フレッチャーはこう答えている。「宇宙への進出はまだ続いてはいるが,これまでに発見した中では,対地静止軌道が最も重要な場所であることが明らかになりつつある」。衛星の対地静止軌道は赤道の上空約3万5,900㌔のところにある。この軌道上で,衛星は地球と正確に同じ速さで運行する。それゆえ静止軌道上の衛星は,地上の一地域から別の地域へ通信を中継する通信衛星として有用である。
宇宙での不快感
◆ 「宇宙は行ってみるにはよい所だが,ずっと住みたいとは思わない」と,スカイラブ宇宙船の司令官は語った。一飛行士は,宇宙船内での食物が「士気を大いに損う」と語ったが,そうした刺激の少ない食物が前述の気持ちをいだかせたのかもしれない。そうした食物,また気泡の混じった水,さらに無重力状態が同飛行士の説明する次の衛生問題を引き起こした。「われわれは非常に多量のガスを出さなければならなかった。わたしとしては,この点を軽く見たくない。1日に500回もガスを排出するというのは,あまり気持ちのよいことではないからだ。……ただひとつ救われるのは,みんなが同じほどのガスを出すということだ」。
宇宙のがらくた
◆ 打ち上げられた宇宙船の残がいが,現在一日一個の割合で地球に落下している。現在のところ,人畜に被害が出たのは,13年ほど前にアメリカの宇宙探査船の重さ18㌔の破片がキューバで牛を殺した事件だけである。1962年には,ソ連のスプートニク4号の,重さ9㌔の破片が,アメリカ,ウィスコンシン州マニトウォク市の大きな交差点上に落下した。多くの場合,こうした物体は大気との摩擦で燃え尽きるか,海上に落下する。打ち上げられた7,000個以上の物体のうち,今年の1月初め現在で3,000個近くが軌道上に残っている。そのうち,624個を除けば,他のすべては“残がい”とみなされている。
大量輸送
◆ 最近,大量輸送の問題がさかんに話し合われるようになった。アメリカ,ワシントン州シアトル市では,道路の混雑を緩和するために,バスの無賃化が奨励され,かつ成功した。しかしイタリアのローマでは,無賃バスの乗客が主にそれまでの歩行者であり,自動車の運転手ではないため,交通は依然として混雑したままであることが明らかになった。ビジネス・ウィーク誌の次の記事に同意する人は少なくないであろう。「現在の皮肉な現象の一つは,ガソリン不足とその配給制に対する不安が,収容能力の点でも快適性の点でもまだ不足のある大量輸送機関の使用を奨励していることである」。