世界展望
ガソリンの不足
◆ アメリカのドライバーは今年の夏,ガソリン不足のために不自由を感じるかもしれない。品不足は値段もつり上げるだろう。原油の需要がますますふえているため,このガソリン不足が生じている。そして,限られた供給量とボーリングに要する高い費用のために,ガソリンの値段は高くなっている。今年の冬の燃料危機のさい,大量の原油が暖房用にふり向けられ,そのためガソリンの貯蔵量は減少した。産業界の代表者の中には,将来,政府によってガソリンの配給制が敷かれることを予想している人もいる。
妊娠中絶の影響
◆ 英国の研究家A・ウィン夫妻は,母親が以前に行なった妊娠中絶に帰因する,重大な障害を持つ赤ん坊が毎年何百人も生まれていると主張している。同夫妻はさらに次のようにも述べている。「妊娠中絶をしたことのある婦人と結婚する人は,不妊の妻,あるいは死児や,未熟児や,奇形児を得る可能性が大きい」。婦人科医ジョン・ビールはウィン夫妻の調査結果に同意して次のように述べている。「特に初めての妊娠で中絶手術を受ける患者が,なんらかの重大な影響をこうむることをわたしは少しも疑わない」。同じころ英国の看護婦を対象に行なわれたギャラップ調査によると,妊娠中絶手術に関係した看護婦の3分の2は,心をひどく乱され,仕事をやめようかと考えたほどであった。1972年に英国で行なわれた妊娠中絶は15万6,714件であった。
薬と人情
◆ これまでの進歩にもかかわらず,引き続き改善することを要する医業の一分野について,ウェストチェスターの医学会報は次のように報じた。「病院の中で,人情という単純で簡単なことばを耳にすることは決してない。…もし,人情というこの単純な要素が欠けているなら,最も近代的で最善の医療でさえ完全とはいえない。人によってはそれを感情移入,思いやり,同情心その他のことばで呼ぶかもしれないが,人情はわれわれが当然のものとあえて考えようとしない,人間性のきわめて重要な一要素なのである」。
襲われる教師
◆ アメリカの教師は,学生の襲撃目標になることが多くなっている。最近の報告によると,デトロイト市では毎日平均ひとりの教師が襲われている。ある学校では,教師たちはグループを作って授業に出かけ,財布は上衣の下に注意深くしのばせている。ダラス市教職員会執行委員ハープ・クックは,学生は「あらゆる種類の卑わいなことば」を教師に浴びせると述べている。同市では,最近ひとりの教師が一群の少女に背中をけられた。また,別の学生はハンマーで照明装置をこなごなに砕き,それを見ていた教師に,「おまえは何も見なかったんだ」とすごんだ。最近,ニューヨーク・デイリー・ニューズ紙は社説の中で同市について次のように述べている。「過去数年間にわたって,学校における暴力行為は増加の一途をたどり,今や多くの学校では教育を施すことがほとんど不可能な状態にまで達している」。
火事の脅威
◆ アメリカ,カリフォルニア大学の山林学の教授ハロルド・ビスウェルは,サンフランシスコ湾東部の丘陵地帯はアメリカ最悪の森林火災を突然引き起こすおそれがあると警告した。同地区では昨年12月の寒波で200万本のユーカリ樹が枯死した。樹皮や枯葉や朔(種子を包む外皮)は湿っている時でさえ燃える。ユーカリ樹には天然の油性分が含まれており,万一発火すれば,猛烈な勢いで燃える。樹幹は60㍍余のたいまつと化し,時速160㌔で荒れ狂う火炎のあらしを引き起こすおそれがある。そうなれば,多数の焼死者が出るであろう。それに加えて,樹木は枯死してから数か月を経ているので木質部が非常に堅くなっているという問題もある。1本の樹木を切り倒すのに動力のこぎりの歯を2,3回取り変える必要があろう。そのため,樹木を切り倒して燃料用のまきにするのは実際的ではない。しかし,それらの樹木はパルプ用には適している。
犯罪は減少している?
◆ 最近,アメリカの政府および警察当局のある人びとは,犯罪は減少していると主張した。しかし,ザ・ウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説は,「人に襲われはしまいかという恐怖心をいだくあまり,日中でさえ外出することを恐れる市民のいる都市」について論評し,次のように述べた。「最近の政治演説や増強された警察力にもかかわらず,アメリカの大都市では強盗や,しばしば残忍な仕方で人を後方から襲う犯罪は日常茶飯事である。強盗の犠牲者が銃で撃たれることは決して珍しくない。われわれの社会が,犯罪は引き合わないということを犯罪者に自覚させていないというのは不幸な現実である。事実,数人の学者は…犯罪は確かに割に合うという単純な事実が多くの犯罪の犯されている理由を説明するものとなりうるという序論的結論を提出している。普通の犯罪者は,たとえ逮捕されても,もはや処罰を恐れないので,犯罪は割にあうのである。警察官は過労気味で,裁判所の審理日程はぎっしり詰っており,社会は関心を向け誤っており,刑罰学者は服役は囚人の社会復帰を妨げるとして懲役処置に反対の態度を取っているため,犯罪者はますます優勢になり,社会は不利な立場に立たされている」。
血液による犯罪捜査
◆ 人の血液は個人個人非常に明確な相違があるので,今や法律違反者を識別するのに用いられている。血液検出装置を備えている英国のある研究所の一当局者は,「理論的には血液を調べて,犯罪の容疑者として地上のひとりの人間を割り出すことは可能である」と述べた。血痕の主要血液型を鑑別し,さらに細分して血液型を判別し,慎重に分析した後,その血液の保持者を明らかにすることができる。犯罪現場にごくわずかの血痕を残していった犯罪者や,ひき逃げをして被害者の血を自動車につけた運転手は,もっと容易に逮捕することができよう。この技術は犯罪との戦いにおける大きな突破口になるものと考えられている。
同性愛者は性病を広める
◆ 性病はカナダ全土で急増している。オンタリオ州のハミルトンおよびウェントワース郡では,伝染性梅毒患者の3分の1が男性の同性愛者によって感染したものと考えられている。性病検査計画に携わっているトロントのある医師は,同性愛の乱交を行なう者たちの間で性病がどれほど早く広まるかについて次のように述べた。「彼らの中には一晩に7,8人の相手と交渉を持つ者がおり,信じられないほどの乱交が行なわれていた。乱交は社会の一部分の人びとに限られていたのではない。聖職者,会計士,弁護士,歯科医,一般の医師,労動者などが含まれていたのである」。
冷凍処理をした精液は受精能力を失う
◆ アメリカのテキサス大学のふたりの研究者の報告によると,冷凍処理をした精液を長時間保存することは精子の受精能力の大半をそこなうおそれがある。精液の冷凍処理を行なうことは断種手術を受ける男性がふえるとともに一般化してきた。断種手術を受ける男子の多くは断種手術を受ける前に,自分の精液を民間の精液銀行に預けた。そして,もし将来子ともが欲しくなった場合には,冷凍処理を施した自分の精液を用いて妻に人工受精を施し,妊娠させることができるわけである。しかしこの報告書は,精子本来の自発性運動能力の50ないし60%が失われるおそれのあることを明らかにしている。自発性運動能力を有する精子細胞だけが卵子に到達し,受精しうる。
教会はお金を強調する
◆ 資金不足がひどくなるにつれ,教会は羊の群れの霊的な状態よりもお金の問題にいっそう重点を置くようになる。A・ババロア夫人はナイジェリアの最近の「サンデー・タイムズ」誌上でこの点を次のように指摘した。「キリスト教は教会員に対する影響力を失いつつあるように見える。しかも,羊の群れは『飢え』ている。…お金を得ることに夢中になってきたことが,教会の破滅の原因となっている。…キリスト教は,神の前における人間の平等を説きながら,教会の家族専用席をなぜ金持ちの教会員に売らなければならないのか。…教会費滞納者の長いリストを読み上げては,『飢えたクリスチャン』が大いに必要としている説教に用いるべき貴重な時間を浪費している。…日曜日ごとに,失望した何百人もの人びとがわれわれの教会から離れていく。彼らはキリストの足もとで霊的な宴にあずかることを願ってやって来た。しかしどうしたことか,彼らは決して養われてはいない。巨大な怪物,つまり商業主義という邪魔物がいつも立ちはだかっている」。
しおれる緑の革命
◆ 数年前,緑の革命は高収量の種子を開発したため,飢えを永久に終わらせるものになったと予言された。では緑の革命は成功したであろうか。アメリカ,コロンビア州の人類学者M・ハリスは最近のナチュラル・ヒストリー誌の中で次のように述べている。「緑の革命はアジアにおける飢えや栄養不良の問題を大いに緩和するものとはならなかった。全体で2,000万ヘクタールを超す土地に高収量品種の米や小麦の栽培を行なったにもかかわらず,アジア全体の昨年の穀物生産高は危険なまでに低い水準に低下した。…インドは…大災害の瀬戸ぎわに立っているといえよう。…インドの一人あたりの穀物収穫量は,緑の革命が始まる以前の1960-61年当時の水準以下に下がった。…一部専門家に対しては,緑の革命は欺まんにすぎないことを残酷なまでに率直に告げて,現実を彼らにはっきりと認識させるべきである」。
従軍牧師用の手引き
◆ 1973年3月,従軍牧師用のカトリック教会の最新の手引き書が発行された。「アメリカ合衆国軍教区に奉仕する司祭のための便覧」と題するその本の前書きで,ニューヨーク市のテレンス・クック枢機卿は次のように述べている。「われわれの軍隊の全将兵とその家族の霊的命のために貴下が行なっている重要な務めに対し,わたしは感嘆の念をますます深くしている。事実,アメリカの軍隊における従軍牧師の務め以上に偉大な使徒的務めをわたしは知らない。…貴下の献身的奉仕に神の祝福のあらんことを祈りつつ,キリストにあってここに感謝の意を表す」。しかし,聖書は「殺すなかれ」と述べてはいないであろうか。―ロマ書 13章9節。
衰微する英国教会
◆ ロンドンのウェストミンスター大寺院は,英国教会の誇りと考えられている。しかし,そこでほんとうに聖書が教えられているだろうか。シアトル・ポスト・インテリジェンサーの一記者は最近同寺院を訪れ,次のように報告した。「説教壇に立っていた牧師が,エデンの園の物語を熱をこめて読んだ時,私と同じ列にいた二人が,この牧師は,『ざせつ感に打ちひしがれた,シェークスピア劇の悲劇俳優じゃないのか』と言ってくすくす笑い出した。…牧師は,アウシュビッツ,ボルテール,ソクラテスなどにかんする例を用い,『アダムとエバは,その生涯をとじる時に,エデンの園を出たことを後悔しなかったと私は思う』と結論した。もしこれが別の時代にあの説教壇から話されていたなら,この説教は異端審問にかけられ,英国全土をゆるがしたことだろう」。しかし現在はどうか。それを気にかける人さえいない。僧職者でジャーナリストのT・ビーソンの著わした新刊書,「危機に面する英国教会」によると,「教会の影響力は,英国がキリスト教国になって以来経験したどんな状態よりもいっそう低下した」。