世界展望
武器と人権
◆ ボリビアの主要な新聞の一つであるエル・ディアリオ紙は,人権を擁護すると主張する国でありながら,人権をじゅうりんするために武器を用いる者たちに武器を販売している様々な国の主張について論評を加えた。同紙はこう述べている。「武器と軍需品を供給しているこれらの国々は,……まぎれもなく人権を踏みにじる不法な行為に用いられる道具を世界的規模で供給する者としての立場を,詭弁を弄して覆い隠そうとしてきた。彼らこそ,連発式拳銃,機関銃,ライフル銃などで人間を傷付け,殺害し,脅かし,従わせ,消し去るための物資をあてがっている張本人なのである」。エル・ディアリオ紙が述べるところによれば,指導的な立場にある幾つかの国々は,「人間の不可触性を守ることを政策や行動方針の骨子にすると同時に,武器の販売のための取引きを,……買い手と交わすことを忘れなかった。その買い手は売り手の国の人々と戦っていたのである。これらの政府にとって,お金のためならすべてが正当化され,その後には必ず,人権に関する演説を行なう機会が巡ってくるのである」。
テロリストによる死傷者数
◆ スペインの週刊誌「カンビオ16」の報道によると,過去12年間にテロリズムの犠牲となった人の数は西ヨーロッパが最高で,1,267人が死亡している。第2位は南アメリカで,861人が死亡している。第3位はアフリカと中東で,531人。北アメリカ,318人。アジア,197人。ブラックアフリカ,124人。そして最も少なかったのは東ヨーロッパで,15人だった。
父親にも責任の一端がある
◆ 「胎児アルコール症候群」。これは,アルコール中毒の母親から生まれる子供に見られる出生時の欠陥の型を表わす用語である。こうした子供には,知能の遅れや身体的な奇形の見られることがある。一研究者の推定によると,アルコール中毒の婦人の産む赤ちゃんの43%はこうした状態にある。では,夫がアルコール中毒者で妻がそうではない場合,生まれてくる子供はどうなるだろうか。米国のメリーランド大学看護学部のエリナ・ライフ-ロス博士はこう述べている。「父親がアルコール中毒者の場合,誕生時にはその症候群の徴候はそれほど明らかではない。胎児の体重や身長は正常の範囲内におさまる傾向にあるからである。子供に情緒的および心理学的な欠陥のあることが明らかになるのは,その後幾年かたってからである」。この治療専門家は,胎児アルコール症候群の損傷は回復不能であるが,「予防できるはずなのにこうしたことが起きる点に悲劇がある」と力説した。
教室でコンピューター
◆ 全米教育統計センターの集計によると,今米国の学校では,5万台以上のコンピューターが教育器材として用いられている。1975年のマイクロコンピューターの開発に伴って,その単価が2,500㌦(約55万円)以下まで下がることにより,教育目的のコンピューター熱が高まるようになった。まだ幼い4歳の子供がこの機械を操作しているといわれ,ある研究によると,このコンピューターは,黒板を使った場合よりも2倍も早く数学を教えることができるという。
教会の人手不足
◆ イタリアの雑誌オギは次のように伝えている。「教会の聖具室係も,人手不足という危機に悩まされており,司教も教区司祭もその問題に頭を痛めている。教会内のこうした務め,卑しいかもしれないが不可欠な仕事を果たしてくれる大切な援助者がいなければ,どうしてやっていくことができよう,と彼らは述べている」。若い人々が教会の仕事を手伝う見込みがあるかどうかについて,同誌はこう付け加えている。「ほとんどの若者は,オルガンを弾くことさえいやがっている」。
これで平時?
◆ ニュージーランド・ヘラルド誌の夏期号は次のように報じた。「戦争は例外で,平和が普通であると広く信じられている。しかし,世界が一般に平和であるように思える比較的幸運なこの時代においてさえ,少なくとも23の戦争が行なわれている事実から目をそむけることはできない」。ヘラルド誌はさらに次のように説明を加えている。「今日の世界にはほぼ日常的に実戦の軍事行動に加わっている兵士やゲリラが約100万人いる。……毎日少なくとも100人の若者が戦死し,それと同数の一般市民が軍事行動の直接の犠牲者として命を失っている」。
人を「身震いさせる」,教会とヒトラーの関係
◆ 英国スコットランドのエディンバラ大学の神学者ピーター・マセソンは最近,「第三帝国とキリスト教会」という題の本を著した。ウィスコンシン州ジャーナルはその書評欄で次のように述べている。「邪悪な政府が,盲目的愛国心を抱く教会関係者に神は特定の民のものであると思い込ませる力を有していることを懸念する人々がいるが,この本のある部分にはそうした人たちすべてを身震いさせるようなことが書かれている」。明るみに出された数多くの文書の一つにドイツのカトリック学生連合の文書がある。同連合はその中で,「国家社会主義[ナチ]革命を我々の時代における偉大なる霊的前進としてたたえ」ている。その文書にはさらに,「第三帝国の理念を具現し,広めることが,カトリック学生連合の使命であり意志でもある」と記されていた。また,福音主義(ルター派)青年運動がヒトラー・ユーゲントと合体した際,同青年運動は次のような宣言を文書に記した。「今後,この年齢層の者で,ヒトラー・ユーゲントのメンバーでない者は何人といえども福音主義青年会のメンバーたり得ない」。
同ジャーナルの書評はその結びでこう述べている。「クリスチャンがヒトラーと対立したときには,ユダヤ人やエホバの証人[証人たちは脅しに屈することを拒んだ],精神病者などに対する組織的殺害よりも自分たちの浴していた特権の喪失の方にずっと大きな関心を抱いていたようである。……この本を読む人は,同じことがもう一度繰り返される恐れはないだろうかと考えさせられる」。
最初のソーラー飛行
◆ 低い震動音をたてて回転する出力2.7馬力の電動モーターを備えた,太陽<ソーラー>エネルギーを動力源とするソーラー・チャレンジャー号がパリ郊外を離陸して,イギリス海峡の横断飛行に成功した。重量95㌔のこの航空機は1万6,000枚の光電池から得られる電力だけを動力としている。これらの電池が夏の太陽のエネルギーを直接電気に変換してモーターを動かしたのである。ポール・マクレディー博士というアメリカ人の設計したこの飛行機は,266㌔のコースの大半を高度3,350㍍,平均時速50㌔で飛行した。
墜落部隊
◆ ニューヨーク・ポスト紙の記者は,米国海軍の一スポークスマンとの会見の後,次のように書いた。「1976年以降事故で破損した米国海軍と海兵隊の航空機の数は実に537機にも上る。これは英国空軍の航空機を全部入れ替えることのできる数である」。過去5年間のこの数字には空軍や陸軍の航空機は含まれていないようである。「最も控え目に見積もっても,これは米国の納税者に優に20億㌦(約4,400億円)を上回る経費を負担させたことになろう」と同紙は報じた。
「業務に関連した」姦淫
◆ 米国ミシガン州に住むある男性は,社命で英国のバーミンガムに単身赴任していた間に,暖房器具の故障による一酸化炭素中毒で死亡した。その暖房器はある女性のアパートにあったもので,男はその女性と姦淫を犯したすぐ後に死亡したのである。ミシガン州行政法担当判事は,その死が業務に関連したものであり,それゆえ家族は労働者災害保障保険によって25万㌦(約5,500万円)の保険金を受け取ることができるという裁定を下した。判事はどのようにその結論に達したのだろうか。同判事は次のように論じている。「人間は本来,社会的生物である。遠くの地に仕事で出掛けている従業員が仕事を終えてホテルに戻った後,壁ばかり見つめていることを期待するのは道理にかなっていない」。しかし,英国を訪れる孤独な男性旅行者が得られる「社会的」活動は姦淫だけであるかのように思わせかねないこうした見解を,英国政府は歓迎しないことであろう。
離婚件数の新記録
◆ 米国では1979年に,離婚件数が118万件という最高数を記録した。これに対し,その前年の離婚件数は113万件であった。この数字は20年前の離婚件数の3倍に当たる。また,人口の増加を考慮に入れても,離婚率は20年前の2.5倍に達している。これらの崩壊した家庭には,平均して子供が一人おり,その合計は118万人になる。
見るだけで太る
◆ 「見るだけで太ってしまう」。太り過ぎを気にする人の中にはこのようにこぼす人がいる。ところが今や,それを裏付けるように思える証拠が挙がっている。サイエンス・ダイジェスト誌は,エール大学で最近行なわれたある研究を取り上げ,次のように述べている。「フライパンでステーキを焼いている光景やジュージューいう音,食物を“連想させるもの”に敏感な人の場合,こうした徴候に接すると体内に高レベルのインシュリンが分泌される。それが好物である場合には,分泌量はさらに増す」。インシュリンホルモンは血液中の糖分が脂肪に転化するのを促すため,調理する光景を見たり,その臭いをかいだり,時にはその物音を聞いたりするだけでも太る場合があるものと研究者たちは結論している。
塩と血圧
◆ 英国のリバプールで行なわれた研究の結果がザ・ランセット誌に掲載されたが,その研究は人間の血圧と塩の摂取量の間に関連のあることを強く示唆している。塩分の摂取量が多いと血圧も高くなるようである。科学者はしばらく前からこのことに気付いていたが,それを確証することができないでいた。確証できなかった理由は,塩分を多く摂取しても人によって反応の仕方が様々に異なり,その反応もすぐには表われないことにあるのが最近になって判明した。
こうした相関関係は,塩を食べ物にほとんどもしくは全く用いない文化・社会とこれを大量に用いる文化・社会との比較研究の結果からも裏付けられている。こうした研究によれば,ナトリウムの一日の必要量はわずか200㍉㌘に過ぎないが,大抵の西欧諸国では毎日約10㌘が摂取されている。米国国立調査委員会は最近,アメリカ人の毎日摂取する塩の量を3㌘程度に抑えるよう勧告したが,権威者の中にはこれでもまだ多過ぎると感じている人がいる。
無気味な元素
◆ 砒素の4億8,600万倍の毒性を有し,指ぬき1杯分で人類を絶滅できるほど危険なものとは何だろうか。パレード誌によると,それはプルトニウムである。このプルトニウムは原子爆弾や原子炉で使用されている放射性元素である。天然には,プルトニウムはウラニウム鉱石中にごく微量見いだされるに過ぎない。ところが,世界各地の増殖炉でばく大な量のプルトニウムが生産されている。現時点で1,800㌔のプルトニウムが紛失もしくは計算上足りない事実を知るなら,浮ついた気持ちなど吹き飛んでしまう。